第52回定期演奏会・『北越戯譜』について

演奏会パンフレットの解説文にリハーサルの写真を加えて掲載します。

日本の伝統的文化の継承

-《北越戯譜》を演奏,上演するにあたって-

桃太郞少年合唱団・副団長・高野 敦

image《北越戯譜》は,日本における現代音楽の第一人者,作曲家であり,音楽評論家,音楽学者としても知られる柴田南雄の代表作の1つで,1975年ひばり児童合唱団により初演された作品です。

江戸時代から,明治,大正,昭和の初期にかけて,現・新潟県魚沼市を中心とした中越地方に伝えられてきた,さまざまな〈あそび歌〉を,実際の〈あそび〉といっしょに再現することをねらって作られた作品で,篠笛と祭り太鼓を伴う盆踊り〈大の阪〉を中心に,〈正月さまのうた〉,〈鳥追いうた〉,〈まりつきうた〉,〈お手玉うた〉など12種類の素材が,演出家,指揮者の判断で,ステージ上で自由に出現し,展開してゆくという,いわゆる〈シアターピース〉とよばれているものです。柴田は,1970年代以降,日本の伝統的な音素材を元にした〈シアターピース〉の制作をライフワークにしており,《北越戯譜》は,《追分節考》,《萬歳流し》に続く3つめの作品になります。

image ここ10年以上,クワイヤー(聖歌隊)としての性格を強くしてきた桃太郎少年合唱団にとって,本作品への取り組みの過程で最も苦労したのは,いつものように整然と並んだ状態で指揮者の指示通り歌うのではなく,ステージ上を自由に動き回りながら,時には自分自身の判断で歌わなければならない〈シアターピース〉への取り組みということもさることながら,まりつき,お手玉,羽根つきなどの,〈あそび〉の練習ということでした。〈あそび〉に苦労するというか,そもそも〈あそび〉を練習しなければならないというのが,おかしな話なのですが,imageコンピュータゲームと共に育ってきた現代の子どもたちはもちろんのこと,高度経済成長期まっただ中に生まれ育った私自身も,〈お手玉〉や〈羽根つき〉といった〈あそび〉を,ほとんどしていません。ですから,本作品の上演にあたっては,様々な〈あそび〉を,私自身が私の親より上の世代の方々から学ぶところから始めなくてはなりませんでした。さらに,インターネットを通して購入した,紙風船,羽根など,〈あそび〉道具の多くが,made in China……。日本の伝統的な文化,〈あそび〉を後世に伝える,ということが難しくなっていることを思い知らされた次第です。

image もちろん,お手玉や羽根つき,まりつきといった〈あそび〉が,元々,女の子の遊びであるといった事情もあるのでしょう。そもそも,男の子だけの少年合唱団である桃太郞少年合唱団が,女の子の遊びを多く含む本作品を上演することにも問題があるのかもしれません。しかし,そこは男女共同参画社会を目指す現代の社会ですし,日本の伝統的文化を後世に伝えるという〈大義名分〉に基づいて,男の子がお手玉や羽根つきをするのもお許しいただければ……と思っています。

image 本作品の上演にあたって,立ち方,歩き方から丁寧にご指導をいただいた演出家の田中敬子先生,楽譜の読み方から,あそびのコツなどさまざまなご示唆をいただいた,ひばり児童合唱団の皆川おさむ様,お手玉あそびを教えていただいた玄馬博子様ほか,多くの皆様に感謝申し上げます。本作品の上演が,日本の伝統的な文化や〈あそび〉の継承のあり方について考えるきっかけとなれば幸いです。

*

なお,〈大の阪〉の篠笛の演奏は,松本みどり様にお願いすることになりました。松本様のプロフィールを紹介させていただきます。

image【篠笛】松本 みどり 

笛師・大森浩志氏に篠笛演奏を学ぶ。
2008年 兵庫県≪スピカホール音楽祭≫
2009年 真庭市≪花伝説―醍醐桜の巻≫
2010年 倉敷市≪洋舞フェスティバル≫
2011年 玉野市≪篠笛とジャズの出会い≫

 


映像は、YouTubeでご覧ください。

 


【曲目リスト】
  1. 正月さまのうた
  2. お手玉、羽根つき

  3. あそびうた

  4. まりつきうた(その一)

  5. お手玉うた

  6. もっくらもちのうた

  7. 鳥追いうた(その一)

  8. 鳥追いうた(その二)

  9. 鳥追いうた(その三)

  10. わら鉄砲

  11. ふうせんつきうた

  12. 大の阪
 
【シアターピースとは?】

演奏者の行為(演技)を中心に計画される音楽作品。ステージのみならず、通路・客席を含む劇場空間全体を活用する作品が多い。 (デジタル大辞泉より)

広告

コメントは停止中です。