直立不動のワケ

年配の方は、「直立不動」というと東海林太郎をイメージするでしょうが、桃太郎少年合唱団もまた「直立不動」が特徴でした。私も直立不動時代の団員です。

近年は、直立不動はもてはやされませんが、姿勢の良さは躾の良さの証明でもありました。

桃太郎少年合唱団の団員は家庭での躾が良いから、あるいは、先生方から厳しい指導を受けていたから、直立不動で歌っていたのでしょうか。

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一人あたり数十センチ角の面積しかいらない直立不動の対極にある歌唱姿勢は、舞台中を所狭しと動き回りながら歌うミュージカルでしょう。

私たちの時代の先生方も、フレッド・アステア、ジーン・ケリーらのミュージカル映画を若い時代に見た世代だと思うので、小学校で唱歌のような歌ばかりを教わってきた団員たちより、歌い踊るスタイルの存在について、よくご存知だったろうと思います。でも、そのスタイルは採用されませんでした。

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私の時代の定演で唯一の例外は、草履を履いた紺絣の浴衣姿で歌った民謡のステージです。このときは最前列の団員たちは踊ったとは言えないまでも身振り手振りをしたような記憶があります。

しかしそれ以外は直立不動でした。

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その理由は、躾でも指導でもありません。

たんにステージの広さに比して、団員が多すぎたからです。身動きしたら隣の団員もろともひな壇から落下する恐れがありました。床上の数十センチ角を守るだけでなく、上方においても同じ数十センチ角を守らなければいけません。

あるいは100人全員がスウィングしたら、その振動により共振が起きて、ひな壇が崩れる恐れがありました。

だから、直立不動のスタイルは必然でした。

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まさか上の一節を真に受ける人はいないと思いますが、今の団員たちは、直立不動の子もいれば、身体を自由にして歌っている子もいて、そして、真面目な顔でもにこやかな顔でも、それぞれが楽しそうで一所懸命で、いいものだなぁと思います。

 

 

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