Les Essais d'un ancien membre de "Momotaro Boys Choir"

視覚情報デザインの観察方法、対象への愛情と敬意

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デザインを教える立場から、チラシの視覚情報デザイン面の課題について解説してみます。
他の記事に書いていましたが長くなりすぎたので、新しい記事を立てて移動し、わずかな修正を加えましたが、先に元の記事を読んだ方が以下に記すことを理解しやすいと思います。)

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定期演奏会のチラシは、ここ数年は同じ構成がとられていて、文字内容を除いた主たる変更点は、演奏曲目の行数に応じた写真の縦サイズの変更です。今年の写真は残念ながら一人の団員くんが写らない写真が選ばれています。その理由はどんなものだったのでしょう。というのは、2Fからのアングルを使えば、団員くんが指揮者に隠れることはなかったからです。

そこで、2Fからのアングルが使われなかった理由を、視覚情報デザインの視点から解読しましょう。キーワードは、構図です。

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今年は去年と比べると曲数が多いらしく、チラシの中で、曲目記載スペースが縦方向に広がっています。それに伴って、写真掲載スペースの縦方向を縮める必要が生じています。ところが、全員が隠れずに写っている2Fからのアングルではどうしても縦方向が大きくなります。だから2Fからの写真を使おうと考えたら、写真の差し替えだけでは終わらないことがわかります。一方、1Fだったら何もしなくてもほどよく収まります。

 

上の参考画像は、左が1Fのアングル、右が2Fのアングルで、指揮者の全身と団員全員が横幅いっぱいに入るようにトリミングし、幅を同じサイズにして並べたのもです(※)。上の状態で、2Fの縦寸法は、1Fのほぼ25%増しです。これらの写真の横幅を18cmと仮定すると、縦方向の相違は実寸で2cmほどです。2cmは1円玉の直径です。現在のレイアウトにおいては、他の何かにかぶらないように1円玉を横に並べる隙間はどこにもありません。つまり、2Fからの写真は入らないのです。

(※)2Fの写真、最上段の人物が途中で切れています。手持ちの中にOB参加ステージのリハーサル写真しかなかったので、団員たちだけにするためにクロップしました。

このようなとき、デザイナーは以下の判断を求められます。

<レイアウトを旧来とは変える方向に行く(ゼロに近いところから練り直す)ことと、旧来のレイアウトのままにして、1人の団員くんに泣いてもらうことと、どちらの方向性が望ましいか?>

気をつけてください。あくまでも「桃太郎少年合唱団にとっての望ましさ」であって「実作業者の金儲けにとっての望ましさ」ではありません。

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さて、2Fからのアングルは、写真全面積中でステージ面積の割合が大きいことが一目瞭然です。また1Fの正面からのアングルより遠近感が弱くなるので、迫力に欠けます。だから「全員が写っているからこれがいい!」と手放しで喜んで使えるわけではありません。レイアウトは難しくなります

2Fからのアングルでは、指揮者両サイドにステージ床が広く見えますが、視覚情報面でまったく必要がない情報(視覚要素)です。そして、全体の中で色の濃い指揮者と団員の姿が逆ピラミッドを作り出すので、不安定に見えます。この不安定さは、写真を超えてチラシ全体に及ぶ恐れがあります。

一般的な美術上の知識を念のため記すと、たとえば、聖母子像やお釈迦様の像は絵画でも彫刻でもピラミッド型の構図です。ところが、ガーゴイル魔法使いのように、人々に何かしらの不安感を覚えさせたい対象については、羽や腕やマントを広げて逆ピラミッド型に見せる場合が多いです。逆ピラミッド型の構図がもたらすのは不安感というネガティブな印象だけではありません。サモトラケのニケでは躍動感や飛翔感が表現されています。千手観音は、その性質から「穏やかな動き」とでも言うべきものが要求されるので、ピラミッドと逆ピラミットをうまく重ねた構図がとられるのでしょう。

さて、不安感、不安定感が定期演奏会のチラシに適切であるかと言われたら、誰でもNO!と答えるでしょう。定期演奏会の全体テーマ次第では、あえて逆ピラミッド型レイアウトを採用し、躍動感や飛翔感を伝える必要があるかもしれませんが、上の写真には躍動感も飛翔感もありません。

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要するに、いずれの写真にも、レイアウト材料としての欠陥があったわけだから、問題は「適切な写真がない状況」であると考えるのが適切でしょう。

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このような「適切な写真がない」という失敗経験を大事にすれば、今後は広報用に使うことを意識して写真を撮りためる方向に進めるのでしょう。「今は今、昔は関係ない」なんて嘯きながらサボっていると、同じ失敗を何度も繰り返します。

そして、忘れないでほしいことは、かつてはプロがプロ用の機材やソフトを使わないとできなかったことが、今では素人が、安価な機材を使って、安価なソフトを短時間学べば簡単にできるようになっているという事実です。

また、一部の技術に関しては「今は今、昔は関係ない」と言ってもかまいません。とくに現代人は、昔のことは関係ないとバッサリ切り捨てる姿勢をもてなければ大気汚染の拡大と化石燃料の枯渇で人類は滅亡するでしょう。

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もうひとつ大切なのは、団員のプライバシー保護について真剣に考えられるのは保護者だけだということです。

なぜなら、保護者は我が子の一生を守らなければならないからです。

メンバーが新陳代謝する組織が特定のメンバーを一生にわたって守れないのは自明です。このことに気づけたら、「今」という時代であるからこそ、保護者会に広報に関する意見を取りまとめて上部組織に伝え、場合によっては戦う役割の人が必要であったことが分かるでしょう。

 

視覚情報デザイン面の課題いろいろ

このチラシは視覚情報デザインにおける配慮についての良い教材なので、同等のものを大学1年生くんが課題制作物として提出したときに指摘するであろうポイントをさらに記します。

チラシの写真についてさらに言えば;

写真以外のことでは;

上記、わずか2分程度での観察結果です。大学1年生前期のWordのスキルを問う課題であれば合格ですが、2年生のビジュアルデザインの課題であれば、上記のようにボロクソに言われて不合格です。

授業では学生一人あたり4,5分の時間しかとれないので、2,3分で問題を見つけて、修正の方向性まで含めて説明してやる必要があります。これは毎年毎年、数百、数千の課題提出物を観察しているうちに身についた技術なので、普通の素人さんには2,3分では無理だと思います。だから、素人さんは気づかなくても気にしないでください。もちろん、デザイナーは気づかないといけません。

素人さんの中には「あら捜しばかりする嫌な奴だ」と思った人もいるでしょう。でも、人様からお金を頂戴してデザインする者であれば、上記程度のことは納品前に解消しておくのが常識です。

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また、視覚情報デザインにかぎらず、すべてのデザインにおいて大切なのは、表現対象やユーザーへの愛情や敬意です。それが感じられないデザインはペケです。たとえば、柳宗理の鍋の、見た目と使い勝手がもたらす調理の心地よさ、そういう感覚を得られるかどうかが大切です。

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さて、上のようなことを書いたら、やたら複雑で難しい作業をやらなければならないと感じる人もいるでしょうが、このチラシくらいであれば、高度な写真修正以外はノートパソコンとWordで可能です。

知らない人が多いですが、Wordの挿入メニューにあるテキストボックスを使えば文字を自在に配置できます(PowerPointの文字はすべてテキストボックスなので、PowerPointユーザーはすぐ理解できるはず)。モール飾りは無料素材で手に入ると思います(※)。 また、写真のちょっとした補正は、Word 2010か2013以降で可能になっていますが、汚れ取りはWordでは無理です。観客席部分については、Wordで、エッジをぼかした真っ黒か濃いグレーの四角形を被せてやればなんとかなります。またWord 2016では背景を抜く(消去する)こともできたはずです。写真だけでなく、MBCマークの絵柄だけを抜き出すことも可能です。

(※)入場料を取る催しのチラシだから商業目的です。だから素材の使用許諾条件の熟読が必要です。印刷物には使えない場合はけっこう多いです。それ以前に、写真の中の主役を殺してまでモール飾りを入れた合理的で積極的な根拠があるでしょうか? 一般的にモール飾りを使ってはいけないと言いたいのではありません。美術史をたどれば、モールがあるからこそのデザインもたくさんあります。肝要なのはモールが生きているかどうかです。このチラシの場合は文字と写真で息が詰まるような配置になった結果、それを抑えこむためにやむをえずモールを巡らせたか、あるいは、あるいはモール有りきを前提として他のものを中に押し込めちゃったのか、たぶんどちらかでしょう。いずれにしても消極的な理由で、このままモールを取り去っても、情報伝達の正確度には全く差がありません。

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せっかくなので、学生さんが目の前にいるつもりで、もっと根本的に大切なことを言ってみますね。(^_^:)

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手渡しで配布されるチラシもあれば、パンフレット棚に入れられて、誰かに気づいてもらうのをひっそりと待っているチラシもあります。三つ折りか四つ折りにして郵送されるチラシもあります。

一般的なパンフレット棚の場合、見えるのはチラシ上部1/5~1/3くらいです。上部を見ただけで必要な情報が分かるようにしようと考えるのが当然でしょう。二つ折り、四つ折りも同様、開かなくても分かるようにしようと、普通は考えるでしょう。

そのような目でいくつかのコンサート会場で観察したことがありますが、上手にレイアウトしている例がいくつもありました。チラシでなくても、書店やコンビニの雑誌を思い浮かべれば、「見えること」の重要性が分かるでしょう。

桃太郎少年合唱団、演奏会、日時、場所、これらの情報がパンフレット棚をちらっと見ただけで目に入るかどうか、、、、他の記事に示したチラシ案のいくつかは、それを意識してやってみた結果です。これは簡単ではありませんでした。なぜなら背景で使った写真を撮影した時には、チラシ背景で使用することを想定していなかったからです。背景に写真を使うことについても、ストックが必要です。

一方、桃太郎少年合唱団の近年のレイアウトであれば、写真と日時場所&入場料を入れ替えれば簡単に達成できそうです。文字と写真の羅列にモールを巡らせただけの単純極まるレイアウトだから、入れ替えても視覚的に情報を伝える媒体としての不利益は発生しません。むしろ、その方がチラシの上部から下部に向かうストーリーができるので、良いデザインになるでしょう。下手なら下手なりにやるべきことが見つかるわけです。

よく分からないという人は、チラシを切り貼りして、写真と日時場所&入場料を上下入れ替えたものを作って、自分の目と意識の動きを観察しながら、得られた情報を順次メモしてください。チラシを見終わった時(そしてメモが終わった時)、なめらかなストーリーができているはずです。

また、演奏プログラムの文字色とサイズを変えたら、写真はもっと下でもかまいません。その場合、アカペラグループの写真が、現状の取って付けたような姿ではないレイアウトが可能になると思います。むしろその方がバランスが取れただろうと思います。下手なら下手なりに方法を見つけられるわけです。

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修正するには、手間と時間がかかるし、面倒くさいし、仕事だったら赤字だし、、、ということになります。こういうことを喜々としてやるのは、それによって点数が上がる学生さんだけでしょう。

業務として委託された場合、写真に問題がたくさんあり手間がかかる修正が必要だとか、よい写真がないのでどこかに撮影に出向くとか、あるいは、提供された情報に疑問があるので自分で調べて確認するとか、そういうことで作業時間がどんどん増えていきます。

たとえばホール名が正式名称ではなく通称になっているのはプログラムにおいても同様でしたが、行政の出版物だったら真っ先にダメ出しされるポイントです。提供された情報の吟味は、視覚情報デザイン(とくに編集デザイン)において重要です。

 

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